先日、以下のような2022年広島の得点圏アプローチに迫るnoteを執筆しました。
チーム全体で見ると、速球系を狙い、そこを長打にしたことが高い得点力に結び付くことに繋がったようです。
しかし、打者個別に見ると、それぞれの打者の性質によって様々な特徴が出てくるように思います。
そこで、上記noteの番外編的なところで、個別での得点圏/非得点圏アプローチを振り返り、各選手の特徴を洗い出していきたいと思います。
※一軍で50打席以上の打者(2023年度所属)のみ
#0 上本崇司
非得点圏と得点圏時を比較すると、速球系のボールの投球割合が減少し、曲がり球の投球割合が増加する傾向にあります。
ですが、得点圏の方が速球系にスイングを仕掛けていく傾向にあるようです。
得点圏であっても55.5%も投球割合があるため、自然な狙いでしょう。
その狙いもあってか、コンタクト率は3.3%ほど上昇し、長打こそないもののwOBAは大幅に上昇が見られます。
その他の変化球に対しても、打席数は少ないながら打撃成績は向上しており、大きな穴なく得点圏で強さを発揮しました。
#7 堂林翔太
非得点圏と得点圏時を比較すると、落ち球に脆さのあるイメージもあってか、得点圏時になると落ちる系のボールが増える傾向にあります。
その落ちる系のボールに対してアプローチに大きな変化はありませんが、wOBAは.300近くの大幅上昇を見せています。
その他の球種タイプに対しても、アプローチは変わらずもwOBAは得点圏時の方が高く、ボールの絞りやすさがあるのか、集中力が増すのか。
理由はこのデータだけでは分かりませんが、得点圏であろうとそのパンチ力はどの球種タイプに対しても発揮出来ているようです。
#9 秋山翔吾
得点圏時に速球系の投球割合が低下する打者が多いですが、秋山の場合はそうではありません。
速球系に対して積極的にバットを出していくわけではありませんが、コンタクト率が15%近く上昇と確実に叩けるボールを叩けており、wOBAも.200の上昇幅があります。
この辺りが22年に見せた勝負強さに繋がったのでしょう。
曲がる系の球種に対しても、スイングを仕掛けるケースは増えますが、コンタクト率やwOBAでは同様の傾向を見せており、得点圏時のwOBAは1.243と驚異的な数値を残しています。
一方、落ちる系に対してはスイング率が上昇しながら、コンタクト率は低下と対応出来ず、打席数は少ないながら苦しんだ様子が見て取れます。
#10 マクブルーム
非得点圏と得点圏時の間に大きな投球割合の変化はありません。
しかし、どの球種タイプに対してもスイング率は上昇しており、積極的にバットを出そうとする意思は見て取れます。
その中で得意の速球系は、wOBA.559と見事に得点圏で速球を潰し、曲がる系の球種に対しても長打を増やして見事に対応してみせました。
ただ、落ちる系の球種に対してはコンタクト率が10%以上低下し、各種成績も低下してしまっています。
投球割合の多い速球系、曲がる系の球種には高い対応力を見せているので、そこまで大きな問題はないと思いますが、落ちる系を増やされた場合にどう対応するかでしょう。
#22 中村奨成
打席数が少ないため参考記録に近いところではありますが、得点圏時に苦労している落ちる系のボールが増える傾向にあります。
そこに対してスイング率は上昇していますが、コンタクト率は僅か36.4%とまともに当てられず、苦しい結果となってしまっています。
一方、速球系に対してはスイングを絞ってコンタクト率を上げ、非得点圏時よりも打撃成績を向上させています。
ですので、得点圏での課題は変化球にどう対応していくかといったところになるのでしょう。
#27 會澤翼
非得点圏と得点圏時で投球割合に大きな変化はありません。
そんな中でも特徴的なのが、得点圏時にはどの球種タイプに対してもスイング率が上昇するとともに、コンタクト率も上昇している点です。
積極的にバットを出していくとともに、得点圏ということで読みであったり、集中力が高まることが、このアプローチに結び付いているのでしょうか。
得点圏でも投球割合が50%を超える速球系に対しては、特にスイング率が上昇し、長打はないながらwOBAは高水準をマークしています。
曲がる系には苦戦しているものの、落ちる系にはしっかりついていき、速球系以上のwOBAを記録しています。
打力の衰えは隠せないところではありますが、得点圏でのこのようなアプローチは流石といったところでしょう。
#31 坂倉将吾
得点圏時では速球系や曲がる系の投球割合が増えますが、そこまで大きな変化はありません。
その中でも、曲がる系に対してはスイング率を10%近く上げるアプローチを見せ、wOBAも.440と好結果を残していることは特筆すべきポイントです。
速球系や落ちる系に対してはアプローチに目立った変化は見られませんが、速球系はほぼ変わらないwOBAを記録し、落ちる系はややwOBAを向上させています。
得点圏であろうとアプローチを大きくぶらさず、しっかり結果を残してくるあたりは流石です。
#33 菊池涼介
基本的に速球系にあまり強くないことから、非得点圏であろうと得点圏であろうと速球系中心で攻められています。
得点圏時にはその速球系へのスイング率、コンタクト率が上昇し、wOBAにそこまで大きな変化はありませんが打率は大幅に上昇しています。
加えて、落ちる系へのコンタクト率も大幅に上昇し、wOBAは.300近い上昇幅があります。
得点圏に入ると、速球や落ち球といったゾーンの縦を使うようなボールに強さを見せているのは、心強いところです。
曲がる系に対しても、wOBAでは微増していますが、コンタクト率は10%近く低下しています。
この辺りには、やや危うさがあるところです。
#37 野間峻祥
非得点圏と得点圏時では、速球系の投球割合が大幅に減少し、曲がる系が大幅に上昇するのが、野間への攻め方の特徴です。
その攻めに対して、大幅に投球割合の上昇した曲がる系、依然投球割合の多い速球系に対してスイング率を増しているのが、野間の対応になります。
その甲斐あり、速球系曲がる系ともにwOBA.400台を記録しており、ISOも高水準です。
あまり積極的にスイングを仕掛けないタイプの打者ですが、シチュエーションによっては積極的にスイングを仕掛けにいくアプローチを見せていたということです。
非得点圏時では好成績を収めている対落ちる系ですが、得点圏時ではwOBA.180とやや苦労しています。
しかし、コンタクト率は88%と非得点圏時以上の数値を残しており、高いコンタクト力自体は失われていないのはポジティブな部分でしょう。
#38 宇草孔基
速球系には非常に強さを見せる打者ということもあり、変化球攻めが中心ですが、得点圏時にはそれがより顕著となり、速球系と落ちる系が同じ投球割合とあまり他に見られない攻められ方となっています。
速球系の投球割合があまり高くないにもかかわらず、得意ということもあり積極的にスイングを仕掛け、非得点圏と得点圏時ともに高いwOBAを記録しています。
状況に依存しない速球系への強さをしっかり持ち合わせていると言えるでしょう。
一方、非得点圏だろうと得点圏だろうと変化球には、アプローチも変わらなければ結果にも大きな変化はなく、wOBAはいずれも1割台と苦しんでいます。
スイング率が極端に高いわけでもないのに、コンタクト率が50%そこそこの状況は改善していきたいところです。
#40 磯村嘉孝
得点圏に入ると、速球系の投球割合が減少し、変化球の投球割合が増える、他の選手にもありがちな攻められ方をされています。
そんな中でも特徴的なのは、変化球に対して得点圏時の方がスイング率が低下する傾向にあることです。
決して打席数は多くありませんが、このようなアプローチでコンタクト率を上げながら非常に高いwOBAを記録しており、しっかり狙いを絞ったスイングが出来ていると言えるでしょう。
速球系に対しては、ややスイング率を上げながらコンタクト率も上がり、長打力でwOBAを稼ぐ形となりました。
特徴的なアプローチで得点圏の成績を伸ばす、面白い選手です。
#50 中村健人
速球系に強くないこともあってか、得点圏時だと速球系の投球割合が増すことが特徴的な攻められ方です。
その速球系に対して、スイング率を落としてコンタクト率を上げるアプローチを取りましたが、wOBAは非得点圏時と大きな変化は見られませんでした。
曲がる系に対しては、wOBA自体は向上しているものの、コンタクト率は非得点圏時から半減とアプローチ面に脆さが見られます。
落ちる系に対しても、高いコンタクト率を保つといったアプローチ面に変化はありませんが、打撃成績は大きく低下しており、変化球に苦戦気味といった状況です。
得意とする球種タイプが欲しいところです。
#51 小園海斗
非得点圏と得点圏時に間で攻め方に大きな変化はありません。
元々積極的にスイングを仕掛けいく打者ということもあり、スイング率にも大きな変化はありません。
その中でも変化が見られたのがコンタクト率の部分で、落ちる系のみですが15%近く低下してしまっています。
そのためか、wOBAも.068と散々な成績に終わっており、得点圏時に落ちる系の攻めが増えると苦しくなるかもしれません。
得点圏時では速球系を叩けなくなる傾向にありますが、逆に曲がる系に対してはwOBA.447と強さを見せています。
投球割合の多い速球系をもっと叩けるようになれば、更なる成績向上が期待出来るでしょう。
#52 末包昇大
非得点圏時は曲がる系が中心の、対外国人打者に近い攻められ方となっていますが、得点圏時は得意とする速球系の投球割合が大幅に増す攻められ方となっています。
その速球系に対しては、得点圏だとスイング率を上げて、wOBAも.609と非常に高い数値を残しています。
一方、コンタクト率は20%以上も低下しており、得点圏で力の入った速球をより確率高く打ち返すには、この辺りを改善していきたいところです。
そうすれば、得点圏で速球を潰すクラッチヒッターとしての姿が、より色濃く出てくることになるでしょう。
変化球に対しては、打率こそ悪くないもののwOBAベースでは.200台と低水準で、スイング率は高すぎる水準にあり、コンタクトにも苦戦している様子です。
決して改善は容易ではないでしょうが、レギュラー奪取には超えなくてはならない壁です。
#55 松山竜平
元々速球には強さを発揮する打者ですが、ベテランの域に差し掛かっているということもあってか、非得点圏時も得点圏時も速球系で攻められることが増えています。
そこに対して、高いコンタクト率は健在ながら、wOBAは平凡な水準に終わっており、速球への強さは衰え気味と言えるでしょう。
逆に力を発揮しているのが対変化球の部分で、特に得点圏に入ると、スイング率を落とし簡単には変化球には引っかからないアプローチを見せています。
曲がる系、落ちる系どちらに対しても、wOBAは.350を超える高水準を誇っており、得点圏での変化球対応には目を見張るものがあります。
速球系への最低限の対応力さえ残っていれば、まだまだ勝負強さを発揮してくれそうです。
#59 大盛穂
コンタクトに難のある打者ということもあってか、得点圏時には落ちる系の投球割合が上昇する傾向にあります。
その落ちる系に対しては集中力を発揮し、コンタクト率を20%近く上昇させているのは、打撃成績は伴っていませんがポジティブなところでしょう。
また、その他の球種タイプに対してはスイング率が大幅に上昇する傾向にありますが、打席数が少ないこともあり、結果は参考程度のものです。
ただ、どの球種タイプに対しても得点圏でそれなりにコンタクト力を発揮出来ているのは、成長を感じさせる部分です。
#61 矢野雅哉
非得点圏時は速球系の投球割合が多いですが、得点圏に入ると変化球で攻められることがかなり増えます。
投球割合の大幅に増える落ちる系には、スイング率が落ちてあまり手を出さないものの、結果は残っていません。
逆にスイング率が大幅に増した曲がる系に対しては、大幅に成績を向上させています。
速球系もスイング率を落としたところで成績は伴っていないことから、積極姿勢の方が結果に繋がりやすいのかもしれません。
#63 西川龍馬
得点圏時には速球系の投球割合が低下し、増やした落ちる系で対処しようとする攻められ方となっています。
その落ちる系に対しては、20%近くスイング率が上昇するアプローチで対抗し、wOBAも.232から.504まで大幅に伸ばしています。
その他の球種タイプについては、アプローチに大きな変化はありませんが、満遍なく叩いていずれもwOBA.400超の好成績を収めているあたりは、流石と言う他ありません。
得点圏では非常に頼りになる打者ということがよく分かります。
#69 羽月隆太郎
非得点圏と得点圏時を比べて特徴的なのは、速球系の投球割合が大幅に減少し、落ちる系の投球割合が増加しているところです。
減少した速球系に対しては、空振りなくしっかりコンタクトして、好成績を収めています。
落ちる系に対しても、投球割合が増加したところでスイング率も上昇していますが、持ち前のコンタクト力で大きく数値を落とさず、しっかり対応しきっています。
課題を挙げるなら、非得点圏と得点圏時ともに曲がり球への対応になるでしょう。
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