マツダスタジアムというと、前広島が本拠地としていた旧広島市民球場と比べるとサイズが大きくなり、打者有利とも投手有利とも言えない球場という特徴を持ちます。
2009年に開場して以降、右打者では栗原健太、エルドレッド、鈴木誠也、バティスタの4選手がシーズン20本塁打超を記録していますが、左打者では丸佳浩ただ一人と、左打者がなかなか本塁打を増やせていない現状があります。
この間松山竜平、西川龍馬、坂倉将吾といった左の好打者が所属しており、決して良質な左打者が不足していたわけではありません。
このような現状において、マツダスタジアムを本拠地としながら本塁打数を増やすには、左打者はどうすべきなのでしょうか?
球場特性を踏まえながら、左打者の戦略を考えていきたいと思います。
マツダスタジアムの球場特性
まずはマツダスタジアムの球場特性がどのようなものなのか、確認していきましょう。
各球団の本拠地球場とのサイズを比較したものになります。
左翼と右翼のサイズが異なる左右非対称の構造となっており、左翼のサイズは他の球場と比較しても広くなっています。
中堅は最大サイズで、左中間右中間の膨らみも他球場と比べると標準的なサイズと言えるでしょう。
フェンスは中堅が低くなっているのが特徴的で、左翼の方がフェンスが高い、こちらも非対称の作りとなっています。
まとめると、左右非対称という構造に特徴はありますが、フェンスを含めた球場サイズとしては極端に本塁打の出づらいものではなく、標準的な球場と言えそうです。
ただ、球場の構造の特徴として、左翼はポールから左翼手の定位置の少し奥までが直線となっており、逆に膨らみのある右翼よりも浅い構造となっています。
ですので、左中間への当たりは右中間よりも本塁打になりやすいと言えそうです。
また、開場前年のドラフトにおいて、1位指名で獲得した岩本貴裕が広角に飛ばせる打者であったことから、当初は左翼ポール際のフェンスは7mにする予定だったのが、3.6mに変更になったという逸話もあります。
球場サイズを見ると、引っ張り方向にあたる右翼が1m小さいことから、左打者の方が本塁打を増やす上では有利そうに感じます。
実際どうなのか、本塁打PFを左右の打者に分けて確認してみましょう。
こちらは2022年度のデータとなりますが、マツダスタジアムにおいては右打者よりも左打者の方が本塁打PFは高く出ていることが分かります。
データとしては2022年1年分のみと3年~5年分のデータをサンプル不足ではありますが、こちらの過去のデータを見ても、左打者の方が基本的に本塁打PFは高く出ていることから、恒常的な傾向と言えるでしょう。
ただ、球場の構造上、左中間の方がホームベースからの距離が短くなっていることから、打球方向によっても本塁打の出やすさは異なるように思います。
そこで、今回は左打者をテーマに掲げていることから、左打者の打球方向別にPFを算出することで、その出やすさを確認していきます。
サンプルサイズが小さく(特にセンター方向)あくまで参考程度ではありますが、マツダスタジアムにおいては左方向と右方向を比べると、左方向において本塁打PFが高く出ていることが分かります。
左打者においては、逆方向にあたる左方向を上手く使えるかが、本塁打数を増やすカギとなりそうです。
マツダスタジアムを攻略した左打者・丸佳浩
左打者がマツダスタジアムを攻略するのに、左中間がキーポイントとして挙がりました。
では、マツダスタジアム開場以来、唯一の20本塁打超を記録した左打者であり、18年には39本塁打も記録した丸佳浩は、左中間、ひいては逆方向をどう使ったのでしょうか?
丸がレギュラーに定着し、初めて二桁本塁打を記録した2013年以降、19年にFAで巨人に移籍するまでの6年間のマツダスタジアムにおける、左方向への本塁打数及び割合になります。
マツダスタジアムでの左方向への本塁打割合は39.1%を誇り、ビジターでの左方向への本塁打割合の19.6%を大きく上回っていることが分かります。
昨年のマツダスタジアムで16.3%、全体でも14.5%ということを考えると、特にマツダスタジアムの割合は驚異的な数値を記録していると言えるでしょう。
昨年の村上宗隆が56本塁打中22本塁打が逆方向で、39.3%という数値を記録していますが、それに匹敵すると考えると、丸のマツダスタジアムでの逆方向に飛ばす能力は非常に秀でていたと言うしかありません。
やはりマツダスタジアムの逆方向を上手く使い、本塁打数を伸ばしたようです。
また、年度別に見てみると、初めて20本塁打を超えた16年、23本塁打を記録した17年と、マツダスタジアム、ビジターともに逆方向への本塁打割合はそれほど高くないですが、18年はどちらも両立して高い割合となっています。
18年にはマツダスタジアムという括りにとらわれず、純粋に逆方向に飛ばすコツを掴んだのであろうと考えられそうですし、これが39本塁打という成績に繋がったのでしょう。
このように、マツダスタジアム攻略のカギは逆方向にあると言えそうです。
主力左打者の本塁打方向分析
マツダスタジアム攻略のカギが逆方向にあることが分かったところで、現チームの主力左打者である、西川龍馬、坂倉将吾、秋山翔吾といった好打者はどのような傾向にあるのでしょうか?
西川龍馬
西川のプロ入り後55本塁打の内訳を見ると、左方向への本塁打の割合は20%と決して低くはありません。
しかし、マツダスタジアムに絞ると18.5%にやや低下し、平均の16.3%とほぼ変わらない割合となっています。
逆方向に飛ばせないわけではないため、マツダスタジアムで飛ばすコツを掴めば、目標の25本塁打の達成も見えてくるのではないでしょうか。
坂倉将吾
坂倉の本塁打内訳を見ると、ここ2年で逆方向に5本塁打を記録しており、左方向への本塁打割合は16.1%とまずまずです。
しかし、マツダスタジアムでの逆方向本塁打は僅か1本と、なかなかホーム球場の特徴を活かせていない状況です。
それにもかかわらず、昨年16本塁打を記録しているあたりに、坂倉のポテンシャルの高さが表れていると言えるでしょうし、逆方向を使えれば20本塁打を超える日も遠くないでしょう。
秋山翔吾
マツダスタジアムを本拠地としてのプレーはまだ一年ですが、初めて二桁本塁打を記録した13年以降の内訳をまとめてみました。
シーズン216安打を記録した15年以降は逆方向にも飛ばせるようになり、毎年左方向への本塁打割合は20%超と、逆方向に飛ばせる能力は十分にあるようです。
昨年8/7にマツダスタジアムで逆方向に本塁打を放ちましたが、このような打ち方の再現性を高められれば、再び20本塁打の大台も見えてくるのではないでしょうか。
まとめ
以上より、マツダスタジアムで左打者が本塁打を増やすには、逆方向の使い方がキーポイントとなることが分かりました。
現在所属する左の好打者は逆方向を活かしきれていないため、本塁打を増やすにはここが伸びしろとなってくるポイントでしょう。
しかし、ここでは逆方向をキーポイントとしていますが、決してプルヒッティングに徹して飛ばしていくことを否定しているわけではありません。
ただ、確率的にはフライを上げやすく、かつホームベースからの距離も短い逆方向を意識する方が、マツダスタジアムで本塁打を増やすには効果的と言えるのではないでしょうか。
データ参照
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